胸に刻む生活

 【刻石流水】かけた情けは水に流せ、受けた恩は石に刻めという言葉があります。相手に対してはいつまでも恩着せがましくならないように忘れてしまえということ。逆に相手から受けた恩はけして忘れることなく恩返しに励めということでしょうか。人の世にあっては逆になることが多いための格言です。人間の徳とは報恩感謝の気持ちから生まれるものであり、大切な言葉ではないかと思うのです。


 昔は大切なことは石に刻めといわれました。燃えることなく、腐ることもない石は後世に伝える格好の素材だっのでしょう。当山の境内地にも3基の碑文があり、歴史や当時の願いを今に伝えています。私は日々の生活を胸に刻んでいくことも大切だと思うのです。慌ただしく過ぎてしまう日々にあっては、意識しないと何も残らない一日になってしまいます。


 今日はどんな一日だったのか。何を学んだのか、何に感動したのか、何に感謝したのか、何を反省したのか。今日一日を確かなものにしていくためには、日記や帳簿だけではなく、人として得たものや失ったものについても考えてみることです。信用を得たのか失ったのか。失敗から学んだのか、自信を失っただけなのか。こういった反省が成長の糧となり、より良き明日につながっていくのではないでしょうか。