捨ててこそ気づくもの

 日々の何気ない生活こそ大切なのではないかと考えています。何か特別なものを求めるのではなく、日々の「あたりまえ」をいかに充実させていくかが幸福への正道なのではないでしょうか。いつもより「ありがとう」や「いただきます」にもっと心を込めてみる。いつも以上に仕事を丁寧にやってみる、いつもよりも家族に優しくしてみるなど、あたりまえをあたりまえではなくやってみることです。


 同じことを繰り返していると、どうしても飽きたり、雑になったり、面倒になったり、惰性になってしまうものです。しかも毎日であればあるほど質の低下に気づけないものです。そのため損していることもあります。惰性によった生活の質を低下させないことです。豊かな生活とは日々の何気ないシーンを愛おしみ、より充実したものにしていくことなのです。


 昆虫は外灯の強い光に集まりますが、人間は強い刺激を求めるものです。ですが、強い刺激は疲れるものですし、それ以外のものが目に入らなくなるものです。そのため大切なものを見失ってしまうこともあります。仏道は不要なものを捨てていく生活ですが、それは本当に大切なものに気づくためなのです。惑わされることなく、平凡のなかに光を見出していきたいものです。