幸福の木とお釈迦様

 お釈迦様の逸話は様々ありますが、そのひとつに農夫から「私は田畑を耕して食を得ているが、働かないものに食を与えることはできない」と言われます。これに対して「私は心を耕している」と答えたと伝わります。普通の者が言えば屁理屈なのでしょうが、お釈迦様の言葉には威厳や真実が含まれているからなのでしょうが、その農夫はすぐさま弟子になったそうです。


 田植えの前には土を耕しますが、それによって土が柔らかくなり様々な効果があるそうです。人の心もまず柔軟性がなくてはなりません。硬い心は新しいことを吸収する謙虚さがなく、人間関係においては相手を想う優しさに欠けトラブルの原因となり、希望に満ちた前向きな発想を阻害します。心がやわらかいと各人が持っている幸福の木が根を伸ばし養分を吸収し大きく成長していき、幸福の果実をもたらします。


 幸福の木の養分とは人を想うやさしさである慈悲やそれを実践しようとする善行などです。自らの心に栄養を与えることで、幸福の木は正しく成長していきます。時には困難に直面することもありますが、誠実に乗り越えることができれば、さらなる栄養となります。幸福とは外界からもたらされるものではなく、心に芽生え成長していくものなのです。お釈迦様のようにはいきませんが、心を耕し幸福の木を育てたいものです。