失墜すれば

 「覆水盆に返らず」(ふくすいぼんにかえらず)という言葉を考えさせられることが続きました。一度してしまったことは取り返しがつかないという意味ですが、私は特に信用という意味で捉えています。目には見えなくても信用ほど大事なものはありません。築くには長い時間が必要なのに、それが失われるのは一瞬のことです。この社会は信用で成り立っています。たとえばコンビニで販売されている弁当も、本当に表示通りのものなのか、調べようがありません。それを購入してあたりまえのように食べているのは信用しているからなのです。今回の車会社の驚くような不祥事が起これば信用は失墜し、回復するには長い時間がかかることでしょう。


 信用を失う要因の多くは人間の欲です。悪いことと知っているのに、露見すればどうなるのか分かっているのに、ついしてしまうのは欲に負けてしまうからです。欲は様々な言い訳を作りだし正当化しようとします。正当なわけはないのに、なんだかそのような気になり、超えてはならない一線を越えてしまうのです。仏教ではこの欲のことを悪魔と表現しています。悪魔に負けてしまえば後悔と大きな代償を支払うことになります。「こんなことなら」と思うのは事後のことです。後ではなく先見の明を持たなければなりません。それこそが智慧であり、智慧を体現できる人間になりたいものです。

 

お詫び
 現在、秘仏薬師如来のご開帳を実施していることもあり、思うように更新できないでおります。しばらくは亀のようにゆっくりと更新させていただくかもしれませんので、ご理解をお願い申し上げます。合掌