分かりますか、その立場

 その立場になってみて初めて知る苦しみということがあります。同じ内容の相談を受けて共感すると、自分がその立場になるのとでは大きく違うことを痛感しました。ところが、相手と同じ立場や状況に立てることのほうが少ないわけですから、どのようにしたら良いのか悩ましいところです。「あなたの気持ちはよくわかる」とか「本当に苦労されているんですね」と言ってみたところで、どこまで分かっているのか、あやしいものです。


 想像しかできないとすれば、想像力を磨くことよりも、謙虚に話を聞くこと、相手の気持ちに寄り添おうとすることが大切ではないかと思うのです。ポーズではなく、心からということがポイントなのですが、たとえ親しい仲であっても意外と難しいことだと思わなければなりません。よく相手の立場になってみるといいますが、簡単なことではありません。そのことを心にとどめておくことが必要なのです。


 また、相談する側にも謙虚さが求められます。「どうせ、私の苦しみは誰にも理解されない」と思いながら話していては、相手を信じることも癒されることもありません。お互いに近づこうとしなければ、つながることはありません。人間の経験はそれぞれに違います。同じようなことであっても、同じではありません。いかにAIが進歩しても、信頼関係のない会話に癒しも心の交流もありません。人との交流をもっと大切にしていきたいと思うのです。