求めるに足る

 商売のイメージは湖に例えることができます。お客様はいつも同じ人というわけにはいきません。1回だけの人もいれば、常連さんで来なくなる人もいるものです。湖は絶えず水が流れ出ていきますが、同じだけの水が入ってくるため枯れることがありません。もちろん乾期もあれば雨期もあり増減するわけですが、年間を通してみれば安定しているものです。仕事も水量を調整しながら一定に維持することが大切です。


 捨てる神あれば拾う神ありといいますが、自分のもとを去る人がいるならば、新たに訪れる人もいます。少しずつ訪れて留まる人の数を増やしていくことです。何事も「少しずつ」が大切であり、急激な増減は必ず大きな反動を招くものです。許容量を超えるものは決壊につながります。飽和潜水でも少しずつ深海の圧力に慣れていくように、少しずつ態勢を整えていかなければなりません。


 身の程をわきまえるといえば、差別的なあまりよい表現とは思われません。ですが、自分のことを的確に理解することは大切なことです。大志を抱くことと、無謀なことは違います。大きな目標をもって、その目標に到達できる自分を着実に育てていくことです。会社も人も何もせず求めるばかりではなく、求めるものに足るように成らなければなりません。深い水をたたえる湖のように、何事にも動じることなく歩んでいきたいものです。