すべてをかける

 「二本の矢を持つことなかれ」という言葉を知りました。失敗しても次があるという慢心と、この一本にすべてをかけるという覚悟を比べれば、数の優位など意味がなくなります。応援で練習のつもりでやれと聞いたことがあります。リラックスして臨めという意味なのでしょうが、緊張感も必要です。ひとつのことに、どれだけ集中して覚悟を決めることが大切だと思うのです。


 私は筆を持つ仕事ですから、長いこと書道に通っていました。ですが、何枚も練習をして一枚の作品を作るよりも、毎回本番の朱印や御札を書いたほうが上達するように思います。「失敗してもいい、次がある」と思ってしまうと、なかなか上達しないものです。本人を目の前にして本番の数を重ねていくほうが鍛えられます。


 それがすべてだとは思いませんが、想いの強さというものが大切です。同じことを同じようにやっても、気持ちひとつでずいぶん違うものです。必死という言葉が死語になりつつありますが、気持ちから言葉と行動が生まれ結果につながっていきます。「これだけは」というものを持ち、そのために素直に頑張ることができればと思うのです。