宝在心

 当山の宗旨は真言宗であり開祖は弘法大師です。大師の言葉に「仏法遙かに非ず。心中にして即ち近し」とあります。悟りというものは、どこか遠い世界にあるのではなく、自分の心の中にあるという意味です。仏教といえば厳しい修行や難しい学問というイメージがあるかもしれませんが、実はそうではなく最初から自らの心に備わっていることに気づくためのものなのです。仏教だけでなくは古今東西の様々な宗教や哲学は人間の幸福というものは外に求めるべきものではなく、自らの心を満たすことが大切であると説いています。この共通性は表現が異なっていても真実は一つだということが分かります。


 外界の財宝よりも、心中の宝のほうが素晴らしいと思うのです。財宝は使えばなくなり、人の心を惑わし、使い方を間違えば不幸になります。人生における素晴らしき経験、感動、学び、出会いなどすべて宝だと思うのです。心に素晴らしき宝を蓄えることで心が豊かになります。若い時は物質世界での享楽が楽しいかもしれませんが、加齢とともに味覚が変わっていくのと同じように、物質世界から卒業して心の世界の充足を楽しめるようになりたいものです。上杉家の祈願所の法流を受けていますが、上杉謙信公は宝在心という家訓を残しており、16ケ条からなるこの家訓はすべて心の修養を教えています。興味のある方は検索してみてください。