立場が違えば

 観光関係者と話せば経済を回すことが重要と言われ、医療関係者と話せば感染拡大を止めることが重要と言われます。どちらも間違いではなく大切なことなのですが、立場によって主張が異なります。もし観光関係者が医療従事者の立場だったとしたら、経済よりも医療崩壊の阻止を主張することでしょう。人の世において絶対唯一の答えはありません。100人の人間がいれば100の主張があり100の価値観があります。


 私は自分の主張や価値観も大切ですが、自分とは異なる相手の主張や価値観も否定する前に聞いてみることが大切だと思うのです。そうすることで自分だけが正しいという執着を払い、たくさんある主張や価値観のひとつとして自分のものがあると分かれば、周囲や社会に対する態度や言動も変わってくると思うのです。執着を抑え自他の公平性を保つことで心がおだやかになります。執着からは敵対意識や被害者意識が生まれます。相手を認めようとすることで円満になるのです。


 相手の言葉を聞けない人がいます。相手の心が見えない人がいます。そういう人は共感や協調ということがなく、たった一人で生きているようなものです。使い古された言葉ですが「2人ならば喜びは倍になり、悲しみは半分になる」といいます。多くの人とつながることによって、たくさんの学びがあり感動があり人生が豊かになります。食べ物ばかりではなく、人間関係も食わず嫌いはやめて、まずは相手の言葉に耳を傾けてみたいものです。