座右の銘の意味

 日本が誇る仏教学者の鈴木大拙の特集号を読んでいます。そのなかに「ひじ、外に曲がらず」という言葉がありました。肘は内側には自由に曲げることができますが、外側に曲げることはできません。それが肘の本来の働きです。さらなる自由を求めて外側にも曲げようとするのは、自由の範囲を逸脱した愚行であり無理をすれば脱臼してしまいます。できないこと、許されないことをするのが自由ではなく、与えられた範囲のなかで自由を楽しむことが大切です。社会には法律をはじめ様々な規制があります。規制を面倒だと思うこともありますが、私達を守るためのものであり、そのなかで暮らすことが安全安心であり善きことなのです。


 この言葉は大拙先生にとって様々な人生経験のなかで出会った言葉であるからこそ価値があるのだと思うのです。与えられた言葉は自分を救ってはくれません。もがき苦しみ心の底から求めて得たものだからこそ価値があるのです。座右の銘という言葉がありますが、どこかから拾ってきた響きが良いだけの言葉では意味がありません。つねに自分を戒め導いてくれる言葉でなければならないのです。それは自らの人生と向き合うなかで出会った言葉でなければならないのです。