あなたが背負っているものは

 山の中で暮らし木々を見ているとバランスが重要であると教えられます。枝葉がないと光合成ができず栄養分が不足しますが、茂りすぎると光が遮られ根が弱くなります。手入れをしてやれば理想の状態になりますが、人に頼るようになれば樹木が備える自然の力が弱まってしまいます。本来の自然界は若木が成長し枝葉を大きく広げていき、老いれば少しずつ枝葉が落ち、やがて枯れ倒木しては次の世代の苗床になります。あくまで全体がつながり神羅万象のバランスが保たれています。そのなかから一木だけを取り出して、どうこうできるものではありません。


 私たち人間も個人で完結できることは、ほとんどありません。何事も相手があり全体があり、私達はそのなかの一部なのです。社会の歯車という表現を嫌悪される人もいるかもしれませんが、大小関係なくなくてはならない歯車になればよいのです。つながりのなかで自分という存在を考えることができると、孤独や身勝手に陥ることなく、自らの役割や居場所を得ることができます。人間関係を面倒に感じたり虚しくなる人は、まだつながりが弱いのかもしれません。


 木は不要な枝葉が落ちるとバランスが保たれますが、人間も不要なものを捨てることで身軽になれるのです。しがらみ、こだわり、見栄、憎悪、罪悪感、今の自分がしがみついているものが本当に必要なのか考えることも必要です。年齢とともに様々なものを抱えていくのが一般的ですが、どうせならば価値あるものだけを背負いたいものです。知らぬ間にとんでもない化け物を背負っていたということもありますから、気をつけたいものです。