大いなる流れのなかで

 あればあったでかまわないが、なければないでもかまわない、という心境が大切だと考えています。これは若者特有の「どうでもいい」という無気力的な態度ではなく、何事に対しても不満なくおだやかに処する姿勢が、日々の安寧を実現してくれるのです。日々の生活において自分の希望の通りになることのほうが稀であり、自分の思い通りにならないからとイライラしていては、せっかくの一日を無駄にしてしまいます。

 人間の生活には様々な波がありますが、どのような状態であったとしても、その状態に支配されることなく抵抗することなく、おだやかでありたいと願います。そのためには動じない心が求められます。ある人は様々な経験から先々を予測して動ずることがなく、またある人はどのような状況にあっても、自分を信じて動ずることなく。または家族、仲間、神仏を信じることで安定する人、古典を学びそこから力を得て安定する人など様々です。

 小川に笹舟を浮かべると、どこまでも流れていきます。ただ上手に流れていくためには真ん中を流れなければなりません。両端に近づくとひっかかって動けなくなります。仏教には中道という教えがあります。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」という言葉があるように何事も極端になることを戒める教えです。これによって上手に流れに乗ることができるのです。人生の大いなる流れを制御することはできません。私達が心がけるべきことは、いつも清く正しく真ん中の道を歩むことなのです。