匿名という仮面の恐ろしさ

 SNSによる誹謗中傷により悲しい事件が起こりました。あえて事件と表現したのは多人数による殺人ともいえるからです。匿名の世界は人間の悪意を増幅させます。面と向かってなら、名前を出してなら、とても言えないようなことでも匿名なら平気なのです。SNSの普及によって、匿名による悪意もまた広がっています。


 自分がイライラしている時、落ち込んでいる時、心に充満している負の感情を言葉に添えて相手に投げつければ、自分が思っている以上に相手を苦しめ追い込んでしまいます。どこにでもいる普通の人々が匿名の仮面を被り、自分のストレスを発散すべくターゲットを探しネット世界を徘徊しているのかもしれません。


 匿名による誹謗中傷に慣れてしまうと、次は匿名でなくとも現実世界でも同じような行動を起すようになります。モンスターと呼ばれる人々はそうようにして生まれてのかもしれません。言葉も刃物と同じように人を傷つけます。しかも刺した実感がないのが恐ろしいところなのです。口は災いの元といいますが、言葉には気をつけ人を害することがないようにしたいものです。


 事件が起こらないと法律の整備が進まないのはもどかしいのですが、おそらく今回の事件によって様々な規制がおこなわれるようになると思います。そうなったときに今まで誹謗中傷で発散されていたストレスはどこにいってしまうのか。ストレス社会の闇は深く恐ろしいものです。