ワークライフバランスの落し穴

 ワークライフバランスという言葉があります。日本語に訳すると仕事と生活の調和となるそうです。安定した仕事(収入)、残業や休日出勤がなく、育児や介護とも両立できる、そういった仕事が普及することで仕事と生活が調和するそうです。ですが、そういった仕事が普及する日が訪れるのでしょうか。また、仕事と生活を別々に考えてしまうことでかえって調和が乱れるのかもしれません。


 仏教では不二(すべてつながりひとつである)と考えます。同じ人間を人種、貧富、男女、老若などで区別しようとするところに争いや差別が生まれます。国境がなければ戦争も起こらないかもしれません。自分の敷地にはゴミを捨てないのに、公共の場所や他所の土地には平気でゴミを捨てる人もいます。これは自他の区別をして、自分以外のものに対して無責任な人です。自分さえ良ければという発想は自分と他人を区別して自分のことばかりを考えることから生まれるのです。


 優れた人ほど区別することなく、自分のことと同じように相手のことも考えるものです。関わりのなかで生きている私達にとって自分のことばかりを考え生活することは、かえって自分を苦しめることになります。お互いに自分のことばかりを考えれば争いや無関心しか生まれません。調和のとれた生活とは物事や自他を別々に考えるのではなく、セットで考えることで安定してくるのです。