私を裏切らないもの

 使い込んだ筆ほど手になじみ新しい筆よりも使いやすいものです。イメージ通りの線を書けるのは長く一緒にいるからなのでしょう。もちろん筆ですから永遠に使い続けることはできず、穂先が減り割れてくれば使えなくなります。そして新しい筆を使いますが、慣れるまでには時間がかかります。物であっても大切に使い愛着を持ててこそ、そのポテンシャルを最大限に発揮できるのでしょう。


 何事においても自分を裏切らないものというのは、長い時間を一緒に過ごしたものなのでしょう。三日坊主の努力ではなく、日々積んできた努力だからこそ大事な局面で自分を支えてくれます。長く一緒にいたからこそ、ここぞという時には頼りになります。仮にそうでなかったとしたら、自分自身や相手とまだ確かな信頼関係を築けていなかったということです。


 人間は新しいものを求めたくなるものです。新しいものに刺激や魅力を感じるのです。今までの信頼関係を捨て新しいものに走っては後悔するものです。大切なことは飽きることなく不動の価値や信頼関係をつくることなのです。子供が暇だからとゲームをするような、むなしい時間をいくら積んでも意味はあません。目の前のことにどれだけ真剣になれるか謙虚になれるのか。そういう時間のなかで自分を育てていきたいものです。