日本人ではなくなる日

 間もなくお盆を迎えますが、お盆はご先祖様が帰ってくる時期とされています。ご先祖様を迎える準備をして、お墓に迎えに行き、ゆっくりくつろいでもらってから帰っていただきます。はたして現代日本人の何割が本当にご先祖様が帰ってくると信じているのでしょうか。良識ある人々はご先祖様を供養する時期、もしくはご先祖様に想いをはせ感謝する時期と考えているかもしれません。そうでなければ会社や学校が休みとなり田舎に帰る時期と思われているだけかもしれません。


 昔は本当にご先祖様が帰ってくると考えられていました。これを迷信と蔑むのは間違いです。昔の人々は来世を信じることができたのです。自分の命が今生で終わることなく続いていくと信じることができました。これはとても幸せなことであり、人間にとって最大の恐怖である死のその先に進むことができたのです。現代人は来世を信じることができないため、死への苦悩が尽きることはありません。まして長生きするほど孤独になるという我々にとって、認知症は救いとさえ考えられるのかもしれません。


 日本においてはあと10年もすれば宗教的な葬儀がなくなっていきます。すでに儀式仏教といわれて久しいのですが、その儀式すら必要とされなくなるのです。合理的判断というよりも、来世を信じられない人々にとっては面倒な葬儀など煩わしいだけなのです。豊かな精神性を誇った日本文化の根底には宗教があります。その宗教が崩壊すれば、日本という社会が異質なものに変容してしまい、私達は日本人ではなくなってしまうのかもしれません。