翻弄されない人々

 人間というものは習慣として同じ行動を繰り返す性質があり、新しいことに挑戦するのは面倒なことです。特にその思考や行動によって過去に大きな成功を得た、自分は間違っていないという強い想いがある、長年このやり方で問題なかったという場合には、それらを否定して変わるということは簡単ではありません。ところが、時代も社会も大きく変わっていきます。江戸時代ならぬ現代社会で暮らす私達はめまぐるしい変化のなかで暮らしています。


 時代によって求められる価値観や行動は違うものです。私達は時代を選ぶことができませんから、今生きている時代に適応しなければなりません。今の時代を嘆いていも何も変わらず、進化論ではありませんが上手に適応していかなければならないのです。年を重ねるほど時代への適応が難しくなり脱落者が出てきます。しかし、その反対に時代の変化になどまったく無頓着なのに、上手に生きている人もいます。


 そういう人は変化する時代の波には乗らず、変わらない真理のなかで暮らしている人です。変化する時代の波とは物質的な社会です。変わらい真理とは精神的な世界です。精神世界においては江戸時代も現代も一緒なのです。「いただきます」という感謝のなかで食べられることを喜ぶこと、「ありがとう」という感謝のなかで人からの親切を喜ぶことに、江戸時代と現代の違いはありません。人として大切なことに時代の干渉はありません。物質社会で暮らしているうちは翻弄されるばかりで安寧はありません。生きていくために本当に大切なことは何かと問いかけることで、変化のないおだやかな世界で暮らしていくことができるのです。