許す秘訣

 人としての成長とはこの世界の因果を知ることだと思うのです。私達は表面的なところに翻弄されているかぎり平安も幸福もありません。自分を冷遇するこの社会を怨んでも、自分に向けられる敵意ある言葉に反論しても、苦しく虚しくなるばかりです。自らが冷遇されるこの社会の問題は何か、どうすれば改善されるのか。それとも冷遇の原因は自分にあり、自分を変えることが求められているのか。踏み込んで考えていかなければ解決することも納得することもできません。


 どうして、この人は自分に敵を向けてくるのか。たまたま機嫌が悪いのか、誰に対してもそういう態度をとるのか、私が怒らせてしまったのか、相手が一方的に私のことを嫌いなのか。まずは敵意の原因が分からなければ対処することはできません。またその原因を理解してあげるところまでいってはじめて自らの心がやすらぐのです。相手から向けられる敵意を怨んでいるうちは苦しいままです。怨みを捨てるためには相手を理解し許すことが求められます。


 表面的な言葉ではなく相手の想いや立場さらには苦悩などを、客観的に慈しみをもって見ることができれば相手を許そうとする気持ちも芽生えてきます。相手が悪いと責めているうちはお互いに苦しいままです。相手ではなく自分に態度によって自分の心が定まります。自分が怨みから解放され晴々とした心でいたいならば、そのようにしなければなりません。人生経験により自分の心がしっかりと分かり、さらに深く相手の心が見えるようになれば、それだけ相手を許せるようになります。自らの器量を大きく成長させていきたいものです。