定年延長が地域を破壊する


 地域の活性化について話をする機会がありました。地域の活動は60歳で定年退職し時間と体力とお金に余裕のある世代が支えてきました。独身時代は遊びたい時期であり、結婚すれば子育てがあり、子供が大きくなる頃にはお金もかかり仕事も責任ある立場におかれ、余裕のない時期が続きます。様々なものから解放され今までできなかったことに挑戦できるのが60代ではなかったかと思います。ところが、定年が延長され健康寿命ギリギリまで働くことになれば様々な影響があります。


 地域においても少子高齢化のなかで今まで以上に地域力が求められ人材が必要になります。ところが地域を支える主力となる60代が定年できないままでいると地域は空洞化してしまい、地域が維持できなくなります。経済と地域の活性化を両立させるのは難しいものです。年代に応じた役割というものがあり江戸時代までは還暦を迎えると村の長老になる年だとされていました。今までの経験を活かして村を指導する立場でした。現代には長老という役職はありませんが、長老的な立場として地域を支えることは今も昔も変わりはありません。


 仕事の意義を考えた時に生活の糧を得ること以上に様々な経験のなかで人として成長することにあると思うのです。仕事には能力以上に忍耐や人間性が求められ、遊びや趣味では得られない成長があります。いわば社会によって育ててもらったともいえるわけですが、それを還元する時期が定年後の生活だと思うのです。自らが得た経験を地域のために活用することも人生の大切な役割です。還暦を迎えたならばお金を得る生活よりも陰徳を積み功徳を得る生き方もあると思うのです。価値観は様々であり各人の選択ですが、定年後の充実した生き方についても考えてみたいものです。