欲界からの離脱

 可もなく不可もなくありのままに生活できたら、どんなに素晴らしいことでしょう。仏教的な生活とはありのままに満足することなのです。ありのままの生活には年収、学歴、職業、能力、体力などの条件はありません。現状のままでいいのですから、とてもシンプルです。ところが、現状に足りないと思えば欲しくなり、苦しいと思えば楽を求め、ありのままに満足することは意外と難しいものです。


 求め続ける限り満足を得ることはできません。満足とはことさら求めなくても満たされている状態です。食事をして満腹となり、そのままスーパーに行っても何も買おうと思えない状態のようなものです。ですが、空腹になれば食欲が戻るように、満足してもすぐに次のものを求めてしまうのが人間というものです。求める衝動はおさまらず、いつもお腹を空かしている子供のように、何かを求めて彷徨っています。


 人生に多くを求め努力することは否定すべきことではありません。求めることは成長や向上へとつながります。ですが、欲望や感情に翻弄され求めたり、不満やストレスを埋めるため求めたり、満足を知らず求めることは戒めなければなりません。少欲知足という言葉があります。欲はほどほどに満足を知るということです。現代社会は人間の欲を刺激して翻弄しようとします。江戸時代までは目の前の生活がすべてでした。現在の情報の濁流は満足を求める心を押し流し、さらなる欲望の世界へと誘います。そんな世界から離れて、もう少しおだやかに暮らせたらと思います。




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