こんな私ですが・・・

 徳川家康は長きにわたる戦乱を治め太平の世を作りましたが、若き時には様々な失敗もしました。三方ヶ原の戦いでは武田信玄に大敗しています。その時の逸話として信玄に惨敗した自分の肖像画を描かせ、終生大切にしていたといいます。凡人であれば表彰など誉れの記憶を留めようとしますが、逆に家康は悲痛な記憶を留めようとしました。それは同じ過ちを犯さないようにという戒めなのでしょう。事実、それ以降の家康は負けたことがありません。


 誰しも消去してしまいたい後悔があると思います。ですが、その後悔を大切に抱えていくことで調子に乗らずに生きていくことができます。順調な時ほど人間は、なんでもできる、最も優れている、いつまでも順調にいけると錯覚しては奈落に落ちていくものです。おかしくなっていく自分にブレーキをかけてくれるものが必要なのです。家康にとってのブレーキは大敗した時の肖像画だったのでしょう。肖像画を見ながら焦らず忍耐強く順番を待ったのです。


 謙虚であるためには上手に自分を落とさなければなりません。自分のなかに芽生えた傲慢や油断が育たないようコントロールしなければなりません。調子に乗らずされど不安に苛まれず、傲慢や不安から離れ感謝の世界で過ごすことが最良の道なのです。良いことは周囲のおかげであり、悪いことは自分の責任であり、しかし自分を責めるのではなく反省して前に進むという姿勢が大切だと思います。「こんな私ですが」という言葉には傲慢も不安も不満もなく、感謝と自信で満たされた気持ちで語りたいと思います。




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