権利と義務のバランス

 日本おいては長らく公と私といった場合に、公が優先されてきました。これは隣国のように強制的に公を押しつけのではなく、自発的に自分のことよりも全体のことを優先してきました。もちろん、戦時中のような例外もありますが、基本的には私を抑え公を優先することで、日本は発展してきました。科学の力も重要ですが、それ以上に正直で勤勉な国民性と社会のためにという奉仕の精神によって日本は豊かさを獲得してきたのです。まさに日本人に受け継がれてきた美徳のひとつではないかと思います。


 ところが、時代と共に公と私のバランスは逆転してしまいました。みんなの気持ちがひとつだったからこそ大きな力が生みだされ、秩序が維持されてきました。その気持ちがバラバラになってしまえば、発展への力は失われ道徳も崩壊してしまいます。私達には義務と権利がありますが、権利ばかりを主張し合えば、争いしか生まれなくなります。国民として、社員として、家族として、友人としての義務を放棄し、お互いに権利ばかりを求めても、うまくいくはずがありません。


 権利ばかりを求めていると不平不満に埋没するばかりです。義務を全うしようとするところに生活が成り立ち、不満や不安も少しずつ解消されていくものなのです。求めるばかりの人と為すべきことを為そうとする人の比率によって、会社や国の発展が決まります。全体が良くならなければ、個人の生活が良くなることはありません。この道理をどのように受けとめ、実践していくかが問われている時代です。



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