仏教の教え(その12)

 十善戒の8番目が不慳貪(ふけんどん)です。これは自分の欲望に翻弄されないようにという戒律です。人間の欲にはきりがないものです。持てば持つほど欲しくなってしまうのが人間です。一つの欲を満たせば、すぐに次の欲が出てきますから、欲を満たすことは砂漠に水をまくようなもので、けして満たされることがありません。まして、この世界は自分の思い通りにはなりませんから、自分の思いが満たされることの方が少ないものです。満たされない思いが、不満となりストレスとなり、私達を苦しめます。
 


 欲という字は谷が欠けると書きますが、谷がありませんから登りっぱしです。どこまで登っても満足という頂上はありません。お釈迦様は欲にはきりがないと知り、最初から欲の山には登らないようにしなさいと言っておられます。ですから、お釈迦様の時代の出家者は最初から何も持たない生活をしていました。
 


 ですが現代に暮らす私達は、そういう生活はできません。ですから、少欲知足という言葉があります。少ない欲で足ることを知るということです。欲をまったくなくすことはできませんから、上手に谷を作ってやり、登っては下がるを心がけ、全体的には平らになるように生活することです。欲望渦巻く現代社会では、ほどほどに上手に自分の欲と付き合っていくことも、大切なことなのではないでしょうか。