仏教の教え(その11)

 次が不両舌(ふりょうぜつ)です。これは二枚舌を使わないように、都合のいいことを言わないようにという戒律です。たとえば友人のA君とB君がケンカをしたときに、A君と話すときはB君を悪く言い、B君と話すときはA君を悪く言うことです。二人の仲をますます悪くしてしまいます。また相手が間違ったことを言っているときに、たしなめるよりも良き理解者を演じ共感してみせること。誰かに知らないことを聞かれたときに、適当に答えること。誰かに対して不安や疑惑を抱かせることなどがそうです。
 


 私達は相手から良く思われたいという気持ちがあります。そういう思いが時として無責任な言葉につながってしまいます。相手のことを考えるのではなく、自分をいかに良く見せるかにとらわれてしまうのです。
 


 大人になると経験から「この人は都合のいいことを言っている」と分かるものです。そのため無責任な人間だと思われてしまいます。言葉一つからも、その人の人柄が見えてくるものです。知っていること・知らないこと、できること・できないことを、しっかりと相手にも伝えなくてはなりません。自分の言葉に責任を持つことも、大人としての責任なのです。
 


 不妄語・不綺語・不悪口・不両舌と十の戒律のうち四つが口に関するものです。「口は災いの元」という言葉がありますが、何気ない一言が人を傷つけることも、誤解をまねくこともあります。自分の言葉であっても、それを解釈するのは相手ですから、気をつけなければなりません。