高度成長期は持つことが推奨された時代でした。まず白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫が。次はカラーテレビ、クーラー、車が三種の神器とされました。他にもブランドや旅行や外食など日本中が好景気に踊った時代ともいえます。消費が大きくなれば経済は成長し好循環が生まれます。政府も経済も国民もすべて順調だった時代です。その後のバブル崩壊による失われた30年と揶揄される時代を経てもいまだに物欲が社会の大きな原動力となっています。
仏教では持つことよりも捨てることを重視します。持てば持つほど欲しくなるのが欲というものであり、小欲知足の程々の生活を説いています。経済理論には逆行しますが、精神的には捨てることで豊かになれるのです。欲を捨てる、意地を捨てる、コンプレックスを捨てる、傲慢や妄信を捨てる。自分に不要なものを捨てることで楽になれるのです。
私は自分を縛る様々なものを捨てていくことで本当の自分が見えてくるのではないかと思うのです。本当に必要なのかと吟味をして断捨離をして、それでも残ったものが本当に価値あるものであり、本当の自分なのではないかと思うのです。また、間違って捨ててしまったからこそ、その大切さに気づけるとこもあります。部屋に物があふれていると、その価値が分からなくなります。たくさんあるなかのひとつという程度になってしまいます。社会に暮らす大勢のなかで自分という存在を確立するための、ひとつの方法はこれしかないというものを自分のなかに見出すことなのかもしれません。そのためにはまず不要なものを捨てなければなりません。