日々の心がけ

 窓ガラスはきれいに掃除しても、いつの間にか汚れているものです。これは人の心も同じようなものです。手術によって仏教が説く人間の根源的な煩悩である三毒(貪り、怒り、愚かさ)を切除することはできません。日々、窓ガラスを掃除するように、自分の心から生まれてくる煩悩を浄めなければなりません。これを仏教では自浄其意(じじょうごい)といって、修行の根幹としています。


 人は反省しても同じことを繰り返してしまいます。ケンカをして後悔しても、同じような原因でまたケンカします。自分の愚かさに自己嫌悪しても、また同じようなことをしてしまうものです。それが人間というものであり、そんな自分に絶望することなく、あきらめずに付き合っていかなければなりません。古今東西の聖者も悟ることで、悪しき自分を捨て去ったのではなく、悪しき自分を含めて聖者になったのだと思うのです。


 日々反省であり修行なのです。切り離すことのできない悪しき自分の誘惑に負けないようにしなければなりません。人はいきなり堕落することはなく、少しずつ落ちていくものです。いつの間にか気づかないうちに恐ろしいところにいるものです。賢い人ほど成功している人ほど今の自分の位置や状態を確認しているものです。きれいな窓の秘訣は毎日の掃除ですが、人の心も毎日のようにきれいにする心がけが大切です。