欲との戦い

 多くの人間は自分は欲に負けることなく、適切に制御できると思っています。ですが、その多くは過信であり、たとえ大人であっても意外と弱いものです。「こんなはずではなかった」という後悔の多くは自らの欲への敗北なのです。古今東西、様々な宗教や哲学は欲への警鐘を鳴らしています。仏教では欲を悪魔と呼んでいますが、恐るべき存在なのです。


 欲への誤解はいろいろありますが、ギリギリのところで自分は大丈夫だと思ってしまいます。「あと少し、もう少し、大丈夫だ」と自分から悪魔に近づいていくのです。それこそ悪魔の策略とも知らずに、気づいた頃には手遅れになっています。また、もっともらしい言い訳を作っては悪魔の誘惑に乗ってしまうのです。いかに正当化しても偽りなのです。


 正しい選択は最初から近づかないことです。戦って勝とうとするのではなく、距離をとり戦わないことです。現代社会は人間の欲を刺激し正当化する混沌とした世界でもあります。昔であれば出家することで俗世(欲の世界)から離れることができました。ですが、今は逃げ場はありません。どこにいても欲の影響を受ける時代です。持てば持つほど欲しくなり、食べれば食べるほど食べたくなります。何事も節度ある生活が大切であり、欲に翻弄されることなく暮らしていきたいものです。