死を考えるようになったら

 年齢と共に不安や執着が強くなる人と逆に弱くなる人に分かれるようです。人間はある時期から死というものを意識するようになります。死というものを意識した時の態度によって不安や執着の強弱が変わってくるように思うのです。人は誰しも有限ということを前提に生きています。死からは逃れられないという道理に反して、いつまでも生きていたいという願いが自らの不安や執着を強め苦しめるのです。


 人間が苦しむ根源は道理に反するからなのです。いつまでも健康で長生きしたい、相手を望むようにコントロールしたい、どんなことでも完璧にこなしたいなど、できないことをしようとするところに苦しみが生まれるのです。死というものを簡単に克服できるわけではありませんが、死を前提にしながらもそれまで自分なりに豊かに暮らしたいと思うことで、不安や執着は落ち着き、さらには本当に大切なことが見えようになります。


 不安や執着に囚われて生きていると、不安を誤魔化すことや執着に溺れるばかりの生活になります。大切なことは明日どうなるかよりも、今日をどのように生きるかだと思うのです。日々の生活を大切にすることで先々への不安や不満よりも、今を生きる喜びや感謝を実感することができると思うのです。小学校や中学校のスローガンにあるような言葉ですが、子供以上に大人のほうが今という時を大切にしなければならないと思います。