困った時の通信簿

 同業者の2人の社長さんと話す機会がありました。お1人は時流を読み瞬く間に事業を発展させてきました。域内全域で不動の位置におられます。もうお1人は着実に事業規模を広げています。例えるならばウサギとカメのような関係かもしれません。前者は誰に対しても独裁的な強さで応じ事業を発展させてきました。後者は誰に対してもおだやかに事業を展開してきました。事業規模を見れば前者が圧倒的ですが、評判ということになれば後者が圧倒的です。


 前者の事業は好調な時は伸び続けますが、問題が起こったり事業継承の時期になると途端に頓挫することがあります。独裁的な経営には絶えず圧倒的な強さが求められます。それは野生の世界のようなもので、群れを率いるボスも年齢に負け新たなる台頭者に負ければすべてを失います。後者の事業には人柄が求められます。打算ではなく人柄で経営していれば、たとえ逆境に陥ろうとも誰かが助けてきます。相手に憎しみを与えるのか、恩を与えるのか。人間は困ったときには自分が今まで与えてきたものが返ってくるようになっているのです。


 人生は長い目で見れば帳尻が合うようになっています。不平等に見えても、それは相手の心が見えないからそのように見えるだけなのです。人生を謳歌しているように見えても不幸な人はたくさんいます。華やかな芸能界でも、その光と影は恐ろしいものです。最終的にその人を幸福へと導くものは金銭や地位ではなく人柄なのだと思います。自らが社会や周囲に対して何を与えてきたのか。その通信簿を受け取るのがいつになるか分かりませんが、後悔しないよう今から心がけたいものです。