肩の力の抜き方

 私達の生活の基本は衣食住です。生きていくためには欠かすことのできないものですが、けして生きるための目的ではないと思っています。ところが、外見を飾ることに執着し必要以上に衣服や装飾品などを買うことが楽しみになってしまう。健康を維持するための食事が美食となり、かえって健康を害してしまう。大きな家を建てローン返済のために仕事でなかなか家に帰れなかったり、部屋を作りすぎて家族がバラバラに過ごすようになってしまう。生活のなかには本末転倒が溢れているものです。


 南国に旅行した男が昼間から気持ちよさそうに寝ている地元の男に話しかけます。「ちゃんと仕事はしているのか。俺は毎日朝から晩まで必死に働いて、久しぶりの休暇でここにいるんだが」、「あなたはどうして、そんなに働くんですか」、「働いて楽をするためさ」、「楽をするとは」、「海外に別荘でも建てて、毎日のんびり暮らしたいな」、「私は毎日のんびり暮らしてますよ」という寓話のような話があります。


 「なければないで、なんとかなる」ものです。ところが、私達は強迫観念に追われるかのように現状に不安を抱いてしまうものです。そして「もっと、もっと」とそれぞれのものを追い求めてしまいます。たしかに備えは必要ですが、必要以上に執着する必要はありませんし、本当に必要なのかと考えてみることも大切ではないかと思います。 


 大河ドラマ「花燃ゆ」では吉田松陰の母親を演じる檀ふみさんは「せわぁない」と口癖のように言います。大丈夫、たいしたことはないという意味のようです。次々に息子が事件を起こしていくなかで、あたたかく冷静に見守っている母親の存在の大きさが印象的です。「なるようになる」という心境を持てれば、生きていくのが楽になります。人生をあきらめるのではなく、開き直るのでもなく、あがくことなく身を委ねるという感覚でしょうか。自分の未来を信じ切るとも表現できます。頑張るべきところは頑張らなければなりませんが、肩の力を抜くことを覚えるともっと楽に生きられるかもしれませんね。


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