不満と憎悪の生活

 ある寺院関係の懇親会での会話です。「今年からこの旅館さん値上げしたそうだが料理は変わらないね」、「いや昨年よりも品数が少ないような気がするね」、「最近はどこの旅館さんも高くなってしまって」、「1泊1万なら気軽に泊まって会合ができるんだが」、「旅行なら高くても泊まるけど、これから地元の旅館に泊まる機会は減りそうだね」


 旅館側からは水道光熱費も食材も人件費もすべて高くなっているためサービスは変わらなくても料金は高くしないとやっていけませんと言われそうですが、双方の言い分は大きく違うようです。観光業界では高付加価値化がキーワードとなり、改修工事等によって旅館の価値を高める試みがあります。今まで1泊1万円だった部屋を改修すれば価値は高まりますが、それを1万5千円に値上げすれば価値は高まりません。


 相手の立場に立つことの難しさを感じます。物価高騰で旅館も大変だから、値上げしても来ていただいてるお客様だから、という相互理解があれば、不満よりも共感や満足が生まれると思うのです。自分の立場に固執してしまうと、相手との溝は深まるばかりです。現代人は心の余裕がないのだと思います。カスハラもそうですが、自分の権利主張や被害妄想の前に相手の立場や気持ちを考えることが円満への道なのです。自分の心に相手を想う気持ちがなければ不満と憎悪の生活から抜け出すことはできません。