耳が痛いのですが

 あの人には何を言っても無駄だと聞くことがあります。そういう人は外界からの忠告やチャンスを無駄にしているようなものです。人間は1人では変わることができません。そのため外界からの働きかけが必要なのです。気づいていないことに気づかせてもらう。足りないところを補ってもらう。許してもらうことで再出発する。自分では正せないことを正してもらう。こういったことはすべて外界からの働きかけなのです。


 外界から今までの自分にはなかったものを取り入れることが成長だと思うのです。外界を遮断して聞く耳を持たないということは、自らの成長を放棄しているようなものです。心ある人々はそういう人から遠ざかっていくものです。孔子は「良藥苦於口、而利於病、忠言逆於耳、而利於行」(良薬は口に苦けれども病に利あり、忠言は耳に逆らえども行いに利あり)と言っています。


 忠言は耳に痛く素直に従うことは難しいが、それを行ずることには利益があるといったところでしょうか。親からの小言は聞きたくありませんが、自分より長い人生経験のなかから得た知恵であり、子を思う気持ちがあればこその小言です。諫言に秘められた愛情に、甘言に秘められた打算に、言葉の表面ではなく、言葉を発した心を察することで、その真意を受け取り自らを変革していきたいものです。