おみくじに思う

 たとえばおみくじを引いて中吉だったとします。大吉と比べれば運気は良くありませんが、小吉と比べれば良くなります。良いものと比べては落胆し、悪いものと比べては安堵するものであり、比べるものによって結果が変わるのではあれば、比べることに意味はありません。それなのに人間は「私はどうなのか」という大事な視点を忘れては、周囲と比べては一喜一憂してしまうものです。


 おみくじであれば運勢よりも、書かれている神仏の教えのほうが大切なのです。その教えを謙虚に受けとめ活かすことが本来のおみくじの意義なのです。社会においても成果や苦労を周囲と比べるのではなく、謙虚に受けとめ次に活かすことが求められます。周囲と比べて安心したいのも人情ではありますが、自分を苦しめることになってしまいます。


 人はそれぞれに性格も環境も能力も違います。正しく比較しようとしても比較はできないのです。また、物事の結果には周囲からは見えない部分が大きく関わっていることがあります。影の努力を知らず、楽して成果を得ていると思ってしまえば、正しい評価も良好な人間関係も得ることはできません。周囲との比較ではなく、自分で満足していくしかありません。難しいことではありますが、「やるだけはやった」という自信と安堵を得られるよう、それなりのことを積んでいきたいものです。