苦界のなかで

 テレビでヤングケアラーの特集を見ました。それまで言葉は知っていても、どこか遠い世界のことであり、実感がありませんでした。今回は介護をする若者と介護される親を映像で見て、その苦悩を聞いて、涙があふれそうになりました。誰も望んで介護をするわけでも、されるわけでもありません。しかし、そうしなければならない現実がありました。


 現代の日本にあって、こんなにも理不尽なことがあるのかと思うのですが、同情するのは失礼だと思いますし、何か具体的に手助けできるわけでもありません。世界に一つだけの花の歌詞に「一人一人違う種を持つ その花を咲かせることだけに 一生懸命になればいい」とありますが、肥沃な大地に落ちた種もあれば、コンクリートの割れ目に落ちた種もあります。ですが、生まれたその場所しかありません。


 お釈迦様はこの世界は苦界であると教えています。しかし、この苦界だからこそ悟りの花を咲かせることができるともおっしゃっています。綺麗事だと言われるかもしれませんが、真実にするのも、綺麗事にするのも、自分次第なのです。お釈迦様は最も恵まれた立場を捨て、生死の境をさまようような修行をされました。そしてたどり着いた境地があります。それぞれの場所で頑張るからこそ得られるものがあるはずなのです。