天恵とするために

 誰しも生きていれば苦悩や迷いがあるものです。これはいわば必然であり悲嘆することではないのです。棚上げにしたり、誤魔化すこともできますが、ちゃんと向き合わない限りストーカーのように、いつまでもつきまとうものです。たとえ転職しても引っ越しても逃げ切れるものではありません。それは苦悩や迷いは外から来るものではなく、自分のなかから生まれてくるものだからなのです。


 苦悩や迷いは天からの試練だと思うのです。それぞれに天より与えられた課題があり、その課題を宿題を忘れたかのように放置していると、その課題を思い出させるために苦悩や迷いが生まれてくるのです。この課題は人生を好転させるために必要なものであり、天恵といえるものなのです。自分に足りないものを補うことで、より安定した人間になることができます。逃げるのではなく、克服しなければなりません。


 好きなことばかりで生きることはできません。苦労も苦悩も必然であり、そういったマイナスとも思えるものこそ、本当は自分を鍛えてくれるものなのです。10年前を振り返れば、楽しかったことよりも、苦労したことや悔しかったことのほうが鮮明に思い出せます。それは否定すべき思い出ではなく、必要だったことだと思いたいものです。そう思えるかどうかは、自分の態度次第だと思うのです。何事も嫌だと思えば嫌になり、楽しいと思えば好きになり、信頼すれば味方となります。