不安の時代を生きる

 先の見えない時代といわれますが、私は不安と危機感は違うものと考えています。不安とは漠然としたものであり、どうすることもできないまま怯えるだけのものです。昔、ある高僧が不安に怯える村人に対して、「私が払ってやるから、私の前にお前の不安を出してみろ」と言いました。「村人は形あるものではなく出すことはできません」と言いうと、高僧は「ならば存在しないのと同じではないか」と言いました。


 不安とは、その存在を意識すればするほど苦しくなるものです。しかし、忘れてしまえば存在しないのと同じになります。この心境に達するのは簡単ではありませんが、私は不安を危機感に変換することが大切だと思うのです。


 成功者ほど危機感が強いといいます。危機感とは自分の現状や未来と向き合うことであり、そこから具体的な課題が見えてきて、有意義な行動によって改善すれば結果へとつながるプロセスです。


 どうなるか分からない不安、どうすれば良いのかを考える危機感。自分をダメにしてしまう不安ではなく、自分を成長させてくれる危機感をもって、まさに不安の時代をたくましく乗り越えていきたいものです。