千里の踏破

 天といっても、仏といっても、人生と表現してもかまいませんが、私達はつねに試されています。これはテストや大会ということではなく、時には厳しい試練をもって理不尽や不平等を押し付けられ、また時にはこのうえなく恵まれた環境のなかで甘やかされ、様々な状況のなかでその人間がどのようになるのかを試されるのです。困難に負けてしまうのか、甘やかされ堕落するのか、さらには負け続ける人間なのか、感謝の心を持てないままなのか、すべて試されているのです。


 必要なのは意志の力です。眠くても布団から出るのも、気分が乗らなくても出勤するのも、嫌いな食べ物を食べるのも、苦手な人と笑顔で会話するのも、健康のため禁酒するのも、すべて意志の力なのです。慣れてしまえば頑張らなくてもできるようになります。続けてさえいれば楽になっていきます。大変なのは最初のほうです。中学生になり自転車で5キロの片道を通学しようとすれば最初の1ヵ月は大変でしょう。しかし、慣れてしまえばあたりまえの日常になります。


 とても耐えられないと思っても、人間は心も体も慣れていくのです。千里の道も歩み始めれば、どんどんゴールに近づいていきます。ところが、残りの距離を考えるから歩めなくなるのです。考えるほど面倒になり不安になり無理になるのです。無駄に考えるよりもこの一歩に集中したほうが良い結果となります。ここが大事な正念場だと思い、意志の力で乗り越えればあとは楽になります。試されるたびに強くなっていきたいものです。