矛盾の融合

 社会に対する不満というものは、いつの時代にもあるものだと思うのです。政治、若者、価値観の変化、道徳の荒廃など、その対象も昔から変わらないのかもしれません。長い歴史のなかで今の時代だけが特別に問題があるということではありません。様々な紆余曲折を経ながら時代は流れており、長く大きな目で見るならばどの時代も同じようなものであり、順調に流れているということなのかもしれません。


 現状に問題意識を持つことと否定することは違います。不満というものは問題意識というよりも、理解や努力のない否定と表現できるのかもしれません。完全ではない人間が形成する社会には必ず問題が存在し、ひとつの問題を解決すれば次の問題が現れるといった具合です。消滅することのない問題に囚われ不満や悲嘆に埋没するよりも、問題をあたたかく見守ることができるほうがストレスなく暮らせると思うのです。


 誰もが理想や正義を求めながらも、完全には実現できないのが人間の社会です。それは人の弱さや愚かさを含む生活なのですが、そういった生活を愛おしむことができる人は幸福だと思うのです。理想や正義を求める心も必要ですが、弱さや愚かさを認められる心もまた大切だと思うのです。このふたつの心をバランスよく保つことで、矛盾に満ちた社会にあっても迷うことなく歩めるのかもしれませんね。