地味な生活の先にこそ

 人生には楽しく充実して我が世の春といえる時期もありますが、それは一時のことであり、基本的には地味な生活の連続といえるのかもしれません。子供の頃に想像していた人生とは違うのかもしれませんが、それこそがリアルな人生なのかもしれません。年を取るほど忙しく時間に追われ、日々の生活が単調になっていくように感じられます。友人と話しても話題は昔話ばかりというのでは寂しい気持ちになります。


 今の生活を否定しても意味がないことを知りつつも、不満は増大していくばかりで、いくあてのないエネルギーが虚しく消費されています。私達にできることは今の生活を愛おしみ丁寧に生きることだけなのです。今の生活を捨てて、新しい生活を得ることなどできません。今の生活の延長線上でしか生きることはできないのです。今日の生活を楽しめないのに感謝できないのに、輝かしい未来が訪れることはありません。


 普通の人は何をするにも変えるにも蟻の歩みのように遅く時間がかかるものです。ですが、自分という存在が変わらずに自らの人生が変わるということはありえません。どこまでも自分を信じ地味と思える生活を大切にしていくしかありません。蝶は幼虫やさなぎの時期を懸命に生きたからこそ最後のご褒美として華麗に空を飛ぶことができます。私もいつの日かご褒美がいただけるよう今という時を大切に生きたいと思うのです。