素直になれない私達

 川の水はたえず流れており、決して同じではありません。ところが雨上がりバケツにたまった水などは、そのままにしておくと腐ってしまいます。空気も水も流れがなければならないのです。人間は食事をすることで体を維持していますが、同じように心にも栄養を与えないと心も停滞してしまいます。食事では体に良い食べ物と悪い食べ物がありますが、心も同じでありなるべく心に良い影響を与えるものを選ばなければなりません。


 自分の心に与えるとしたら感動と憎悪のどちらが良いでしょうか。アンケートを取れば圧倒的に感動が選ばれると思うのですが、現実世界においては憎悪を選択する人も多いものです。憎悪を選んだ人にさらにアンケートで、どうして憎悪を選んだのかと問えば「相手が悪い」という答えが圧倒的だと思います。さらに、では相手が悪い原因はなんでしょうかと問えば、相手の性格、感情、立場などが想像されます。ですが、なかなか「自分も悪かったから」という答えはかえってこないかもしれません。ですが、人間関係に一方的な原因はありません。子供から大人まで争いは両成敗なのです。


 冷静に物事を考えれば必ず自分にも非があるものです。あとはそれを認めることができるのか、謝ることができるのか、関係を修復できるのかにかかっています。冷静に考えることができれば原因と解決策は分かるものです。ところが、解決策の実行ということが難しいものです。人間にとって素直に認めるということ、素直に謝るということは、大切でありながら日常生活のなかで最も困難なことなのです。それができるという人は勇気があり、人として修養し成熟しているという証でもあります。