防衛本能による錯覚

 私は温泉街を一望する高台で暮らしています。全国には3000近い温泉地がありバブルの頃はどこも同じように賑わっていました。バブル崩壊後はどこも宿泊客が半減し、さらに東北では大震災以降さらに2~3割は減少しています。数字を見れば危機的状況なのですが、人間というものはその状況に慣れてしまうものです。慣れてしまうと危機感がなくなり、改善させようとする意欲もなくなるものです。


 最初は大変だと思っていても数年もたてば、その状況が日常となり危機感や疑問を忘れてしまいます。慣れるということは、その状況に適応するという場合と正常な感覚を失ってしまう場合とがあります。進化し適応するならば問題ありませんが、自分の足元が崩れつつあることを知らずにいるのは危険なことです。後悔先に立たずとは名言であり、生活が破綻してしまってからではもう遅いのです。


 人間には防衛本能があり危機的状況にあって自分を守るために様々な形で現実を歪めてしまいます。危機的状況にありながら、その危機を感じなくてもすむようになるのです。精神的な問題であれば代償となる問題行動が起こるようにもなりますが、現実的な問題であれば破産や離婚など決定的な状況となるまで無自覚のままです。大切なことは、まず問題に気づくこと、問題解決のために学ぶこと、状況を改善させ問題を解決するというプロセスをたどらなければなりません。あたりまえの日常を疑ってみることも必要なのではないでしょうか。