自分らしさとは

 飢えを知らない人間は本当の意味での満足を知らないのかもしれません。不幸や苦労を知らないと幸福を感じることはできないのかもしれません。昭和50年以降に生まれた人々は可もなく不可もない時代を生きており、いわば極端を知らない世代なのかもしれません。戦争や飢饉もなく生活が安定していることはありがたいことなのですが、戦争や飢饉のない生活があたりまえになれば、そこから新たなる苦悩が生まれるものです。


 安定している日本社会で暮らしている私達は意識して様々な経験をしなければならないと思うのです。その経験のなかから比較材料や判断材料を得なければなりません。これは他人と比較して一喜一憂することではなく、積極的に様々な経験をすることで今の自分を理解する手がかりを得るということです。自分よりも優れた人間を求めることで、今の自分の未熟さが分かります。子供食堂に行ってみることで、ボンティアをしてみることで、海外に行ってみることで、様々な経験によって自分という人間を理解できるようになると思うのです。


 自分を理解できなければ、自分が何を求めているのか、自分は何をしたいのか、そもそも何のために生きているのかが分かりません。与えられた役割や勤めを果たすことはできても、自分のために生きることができません。自分のために生きるという人生の大前提が崩れてしまうと生きる喜びを享受できません。人間は様々な経験を通じて成長するとともに自分という人間を理解していかなければなりません。その先に自分らしい人生があるのではないでしょうか。