感情の転換

 もう一秒たりともこんな会社にいたくない、もう永遠にこんな奴と会いたくないと思うこともあります。しかし、面倒だと思っていた仕事や険悪だった相手から解放されると清々したと思いながらも、少しさびしい気持ちにもなります。もしかしたら自分にとってマイナスでしかないと思っていたことでも、日々の活力になっていたのかもしれないと考えることがあります。今の感情だけで判断すると後悔することもあります。


 けして充実していたわけではない仕事でも退職し家にいるとさびしいものです。それは今まで仕事に向けてきた体力と精神力を向けるものがなくなったからなのです。体力も精神力も使わないと低下していきます。怒りや失望といったマイナスの感情であっても、その力は大きいものです。そのパワーを向ける相手がいなくなると、そのパワーは枯渇してしまいます。ケンカするほど仲が良いともいいますが、ケンカ相手でもあった伴侶がなくなると急にガックリくるのは、今まで向けてきたパワーの行き場がなくなり枯渇してしまうからです。


 仏教に煩悩即菩提という言葉があります。仏教では煩悩を滅することを仏道としますが、煩悩にも大きな力があり、その力を悟りを求める力に転換することを煩悩即菩提といいます。日々の生活においてもマイナスの感情を否定し消滅させようとするよりも、プラスの感情に転換していくことが大切です。ケンカしながらも仲が良いのはマイナスの感情を上回るプラスの感情があるからなのです。上手に自分の感情を転換していきたいものです。