苦悩の根源にあるもの

 仏教ではこの世界は苦しみに満ちている苦界であると考えます。では、その苦しみはどこから生まれてくるのかといえば、思い通りにならないイライラからやってくるのです。人間は誰しも自分の思い通りにしたいと思うものです。ところが、仕事も家庭も何もかも自分の思い通りにはいかないものです。まるで言うことを聞かない子供にイライラして、業績があがらい不景気にイライラして、なかなか進まない渋滞にもイライラするものです。


 思い通りにならないことを、思い通りにしようとするからイライラして苦しくなるのです。子供も不景気も渋滞も思い通りにならないことを前提にすればイライラも半減します。もし人生すべてが自分の思い通りになるとしたら、おそらく人間は幸福ではなく不幸になると思うのです。思い通りにならないくらいで、ちょうど良いのです。思い通りにならない不自由と向き合うからこそ人は謙虚に努力することができるのです。


 思い通りならない時には相手が悪い運が悪いと嘆くのではなく、まずは気持ちを落ち着けることが肝要です。思い通りにならないことを、思い通りにしようとして苦しんでいると認識します。そのうえで現状をおだやかに受け入れるか、それとも自分が変わるかの選択をします。相手や社会は変えられないからこその二択なのです。思い通りにならないことを理解できると生きることが楽になります。無理することなく、もっとあるがままでも良いと思うのです。