苦しんでいるのは私

 仏教には三毒という人間を苦しめる原因を教えています。それが貪(欲)瞋(怒)痴(愚)です。足りることを知らずに貪り、和を尊ばずに怒り、真理を知らずに苦悩しているのが人間の姿といえます。さらに私は次の3つがさらに人間を苦しめる要因だと考えています。それが「求めること」、「比べること」、「心配すること」です。1日にどれだけこの3つを繰り返しては苦しんでいるのかを考えてみなければなりません。


 最初の求めることは物質的な求めもありますが、それ以上に精神的な求めが人間を苦しめます。相手に対して信頼や愛情を求め、配慮や遠慮を求め、優先や独占を求め、求めることに疲れながらもさらに求めてしまう悪循環に陥ります。比べることは、相手と性格、容姿、能力、学歴、収入、家族、仕事など、そもそも同じ人間なども1人もおらず環境も条件も違うなかで暮らしているのに、比べられないものを比べようとしては一喜一憂しています。心配とは妄想の産物です。少し体調がすぐれないと大病を妄想したり、相手に直接確かめようとはせず妄想したり、会社の業績が低迷すれば根拠なく倒産を妄想したりします。


 相手に求めてしまうのは相手のことを考えていないからです。相手の想いや立場を考え、道理をわきまえるならば、ことさらに求めなくても関係を築けるようになります。比べてしまうのは自分に自信がないからです。自分に点数をつけようとするから相手にも点数をつけ比べてしまうのです。自分の生き方に満足できるようになると周囲に翻弄されることもなくなります。心配が悪いということではなく、何もしないで不安に埋没することがいけないのです。病気が心配なら検査を受け、相手との関係が心配ならちゃんと話し、業績が心配なら仕事を頑張ればいいのです。


 日々の生活において求めること比べること心配することから解放されると楽になれます。心が安定してくると生活の景色は一変します。今まで苦しかったのは誰かに責められていたからではなく、自分で勝手に苦しんでいたことが分かります。精神的な拘束をはずしてしまえば、私達の心は春の陽気のように晴れやかになれるのです。悪習を克服して苦しみのない生活を享受したいものです。



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