「やりたいこと」と「すべきこと」

 私のように家業を継いでいると周囲への配慮や全体のなかでの自分の役割や位置を意識する機会が少ないものです。そのため何も言わなくても分かってもらえると誤解したり、役割分担をして全体を作りあげていくということが苦手だったりします。農耕民族である日本人は村という共同体のなかで暮らしてきました。そのため協調性ということに長けた民族だと思うのですが、時代の変化と共に周囲への配慮よりも自分を優先する風潮が強くなり、誤解された個性が横行しているように感じられます。


 本来の個性とは自分と相手の違いを認めることだと思うのですが、現在は好き勝手に生きることが個性であるかのように思われています。誤った個性は周囲との調和を乱し社会を混乱させます。そもそも「人間」という言葉は「人の間で生きる」という意味があります。人間は物質的にも精神的にも一人で生きることはできません。私達が考えている以上に社会的な生き物なのです。社会的な生き物であるならば、やはり周囲への配慮は必要であり、みんなが暮らしやすい環境を作らなければなりません。周囲に迷惑をかけたり不愉快にさせることは、自らの生活環境を悪化させているようなものです。


 自分の言葉や行動が周囲にどのような影響を与えているのか、さらにはその影響が自分にどのような形で返ってくるのかを考えてみることも大切です。私は人間として人の間で暮らしていくためには信用が大切だと思っています。周囲から信頼され望まれることで、居場所と役割を得て豊かに暮らすことができます。自分がやりたいことをやるのも楽しいのですが、人に喜ばれることはもっと楽しいと思える人は幸せだと思うのです。自由に生きることが許されている時代ですが、だからこそ「やりたいこと」と「すべきこと」の区別と実践が求められているのではないでしょうか。




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