広さと深さ

 私は仏教専門の大学でした。京都にあるため寺生と呼ばれる本山で生活しながら大学に通う学生もいました。朝夕は本山の仕事をして、日中は大学に通うという生活です。仏教の知識も本山での経験も得ることのできる一挙両得の生活です。理想的な生活ともいえますが、表現を変えれば寺院のことしか知らない生活です。逆に私は色々なアルバイトをすることで、仏教界では得られない経験もしました。


 この世界はひとつなのですが、その世界は様々な世界によって構成されています。寺院の世界もそのひとつですが、寺院の世界がすべてということではありません。独特の世界であり、この世界の常識が広く他の世界でも通用するかといえば、そうではありません。若いうちはひとつの世界にどっぷりと浸かるよりも、様々な世界を経験したほうが良いと思うのです。


 広く浅いのと狭く深いのとどちらが良いかという議論もありますが、私は一般的には年齢に応じて変えていくべきだと思っています。若い時は様々な世界で自らの経験と可能性を広げて、ある程度の年齢となり自分なりの道が見えてきたならば、その道を深めていけばよいのです。狭い世界しか知らないと、その世界での価値基準や判断基準しかなく、その世界の問題に気づけなかったり、時代の流れが分からなかったりするものです。広い世界を知らなければ、深い世界も見えてこないのではないでしょうか。



応援クイックお願いします
にほんブログ村 哲学・思想ブログ 仏教へ
にほんブログ村