安心感の源泉

 明治維新から今年で150年の節目だそうです。太平の世が続いた江戸時代を維新へと誘ったのはペリー率いる黒船船団でした。当時の日本人は初めて見る黒船に驚いたことでしょう。明治以降は欧米の文明を取り入れ国力を高めることが優先されてきました。それより平成の世にいたるまでその吸収は続いています。ですが、今回の150年の節目を機に西欧文明からの脱却を図るべきではないかと思うのです。


 そろそろ西欧文明は限界点に到達しつつあるように感じられます。日本では仕事によって社会に尽くすという意識がありましたが、株主優先の意識やリストラに代表される社員を資産ではなく経費とみる経営感覚が導入されることで、誰しも自分のことしか考えられなくなってきています。自分の権利ばかりを主張して、周囲や社会への配慮が失われたのも、西欧の価値観が都合よく歪められた結果ではないかと思っています。


 これからこの地球を導くのは共生の意識だと思います。自分の価値観を主張し合い争うのではなく、自分さえよければと考えるのでもなく、個よりも全体を考えることが必要だと思うのです。それは日本人が昔からやってきたことです。自然や隣人と調和し共生してきました。明治からの150年を個の分裂と表現することができます。地域の共生がなくなり、家族でさえお互いのことが分からなくなり、失われていくつながりを誤魔化すかのような生活をしてきました。孤独が肯定され一人で生きているような錯覚が蔓延しました。


 これからは分裂してしまった個を全体へと統合していく時代になっていきます。それはバラバラになってしまったパズルを作り直すようなものです。ひとつのピースで存在するのではなく、パズル全体でひとつという意識を持つことができれば、今よりもっと豊かな生活になると思うのです。失われつつあり、かえって恐怖の対象にもなっているかもしれない、「つながり」という意識は本来は人間にとって欠かすことのできない安心感の源泉なのです。この源泉を回復し世界が平和になることを祈りたいと思います。




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