進むべき道

 入院中に聞いたことなのですが、痛みがひどいと痛みのことばかり考えるようになり、痛みに敏感になるそうです。これは何事にも通じることだと思うのです。お金のことばかり考えていると、ますますお金に執着するようになります。相手が憎いと考えてばかりいると、ますます憎しみに囚われるようになります。もっと欲しくなり、もっと憎くなり、だんだん冷静な判断ができなくなり、恐ろしい結末を迎えるということがあるかもしれません。


 仏教では執着を戒めます。どのような執着であれ人間を幸せにするものはありません。たとえ受験や試合であっても合格や勝利に執着してしまうと、悪魔の誘惑に屈するかもしれません。よく魔が差したといいますが、執着によって心に隙間ができると侵入されてしまいます。私達の心は自分で思っているよりも弱いもので、ニュースで報道されるようなことが、我が身にも起こるかもしれないのです。


 考えるべきは「その先」です。合格することが目的ではなく、合格して何がしたいのかを考えなければなりません。お金を得ることが目的ではなく、そのお金で何がしたいのかを考えなければなりません。その先を考えることで、視野が広くなり目標に向けての様々な道が見えるようになり、執着から解放されます。また、憎しみならば、これからも憎しみ続けるか、それとも仲直りしたいのかを冷静に考えれば、望むべき「その先」が見えてくるのではないでしょうか。


 何事も道理に照らして考えれば正しい答えが見えてきます。迷いや不安が払拭できないとすれば、まだ心が落ち着いていない状態なのです。心を落ち着けてこそ、道理に照らして考えることができます。また、道理ということを学ばなければなりません。その人に道理がなければ、道理に照らすこともできません。道理を学び、心を落ち着けてこそ、進むべき道が見えてきます。 




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