アリの目とゾウの目

 人によって物事への見方がこうも違うのかと驚かされることがあります。まさに千差万別、10人の意見をまとめるのも大変なものです。それぞれに立場も違いますし、生まれ育った環境も違い、経験から学んできたことも違います。価値観が違うといえばそれまでなのですが、白黒はっきりできることでもなく、どのように判断するべきなのか迷うことがあります。 


 ただ物事の見方に浅深があることも確かです。平凡な議論がひとつの意見によって深まることがあります。それは深い意見によって深い見方に気づくからなのです。小さな蟻と大きな像とでは見えているものが違います。より遠く広く見えているのは像でしょう。それは身体の大小によるものです。人間の場合の視野とは視力という意味ではなく、精神的な心の見方にあります。 


 たとえば誰かに嫌なことを言われたとします。それに対してイライラする人、相手の機嫌が悪かったのだと考える人、自分にも落ち度があったかもしれないと考える人、そのような相手をかわいそうだと思う人など様々でしょう。見方ひとつで自分の心もずいぶん違ってくるものです。相手に対しても、人生に対しても、社会に対しても、見方ひとつでまったく違いますし、最も違ってくるのは自分の心なのです。


 自分の心をおだやかに保つための物事の見方というものが大切だと思っています。生きていればマイナスの感情を避けて生きることはできません。そのマイナスの感情をどのように消化するかが問われるのです。私達はどうしても、自分に向けられたものと同じ感情を返そうとします。憎しみには憎しみで応戦しようとします。しかし、それでは終わりなき憎しみが連鎖するばかりです。相手と同じ土俵ではなく、もっと高いところに立つことが大切だと思います。そのために物事や人間関係において、もっと大らかな見方ができればと思うのです。


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